新住協 中部東海支部

高断熱住宅をつくっている工務店・設計事務所が
これから新築・リフォームする人のために本音で語る座談会

高断熱住宅をつくっている工務店・設計事務所が
これから新築・リフォームする人のために
本音で語る座談会

【開催日/2019年2月15日 午後2時~午後5時 開催場所/東濃木材協同組合会議室(恵那市)】

進 行

会沢 健二
一般社団法人
新木造住宅技術研究協議会

顧  問

加藤木 伸将
Li-nart 株式会社 一級建築士事務所
代表取締役社長
静岡県掛川市

鈴村 美咲
鈴村建築 株式会社
営業課課長代理
岐阜県加茂郡白川町

藤井 拓巳
株式会社 ミノワ
代表取締役社長
岐阜県加茂郡白川町

武田 富博
株式会社 タケダ建創
代表取締役社長
富山県富山市

丸山 正樹
丸山建築
代表
岐阜県土岐市

丸山 卓也
丸山建築
工事担当
岐阜県土岐市

纐纈 隆士
有限会社 交告建設
設計・施工管理
岐阜県恵那市

横井 大輔
横井建築

愛知県名古屋市

遠山 大介
遠山建築
代表
岐阜県恵那市

桂山 翔
棲栖舎 桂 一級建築士事務所
代表
三重県四日市市

松木 和則
株式会社 松木建築
代表取締役
岐阜県飛騨市

溝口 祐次
株式会社 溝口建築
代表取締役社長
岐阜県飛騨市

田原 義哲
株式会社 紙太材木店
代表取締役社長
岐阜県加茂郡川辺町

小縣 章浩
株式会社 丸協 小牧支店
取締役支店長
愛知県小牧市

原 孝
有限会社 原建築
代表取締役社長
岐阜県中津川市

堀 好宏
金子建築工業 株式会社 建築部
常務取締役
岐阜県恵那市

梅本 尚子
金子建築工業 株式会社 建築部
主任
岐阜県恵那市

会沢:皆さんこんにちは。

今日は、いわゆる高断熱高気密住宅(以下高断熱住宅)を主に建築している工務店の方々にお集まりいただきました。

新住協の事務局には毎年冬になると一般ユーザーからの問い合わせがあります。

その多くは「高断熱住宅をつくりたいので工務店を紹介してほしい」という内容です。

その問い合わせが一番多いエリアはどこだと思いますか。

東北や北海道の寒い地域と思うかもしれませんが、全く逆で、一番多いのが中部東海、二番目が四国です。

第一位がまさにご当地です。

理由はユーザーの関心が高いわりに高断熱住宅についての情報がないからだと思います。

今日は、高断熱住宅をつくる側から、高断熱住宅の色々なことを話して頂いて、これから家を建てようとする方の役に立つ座談会にしたいと思います。

今日は中部東海に限らず、三重県や富山からも参加していただいております。

まずは、皆さんのご当地で高断熱住宅に住んでいるお客さんの暮らしや感想がどうなっているかから入りたいと思います

【高断熱住宅で暮らしはどう変わる】

武田:

私は富山ですが、今年の冬、こんなことがありました。

電力会社の担当の方が来て、「仕事上、色々な住宅を見て回っているが、玄関がこんなに暖かい家は初めてだ」と言っていました。

玄関に入った瞬間の暖かさに驚いたようです。

私にとってはそれが特別なことではないのですが、そういう違いって住宅会社によって大きな差があるんですね。

溝口:

私は高山です。

おそらく今日出席している人の中で一番寒いと思いますが、暖かさにはビックリされています。

暖房はエアコンを使って床下から暖房しているのですが35坪の住宅全体が暖かくなっています。

勿論、断熱材の厚さもサッシ・ガラスもハイグレードではありますが、それにしても今までの住宅とは全く違っているので私自身も内心驚きです(笑)。

※読者の皆さんに最初に説明しておきたいと思いますが、拙著に『この「家」にしてよかった。』という本があります。
新住協の高断熱住宅に住んでいるユーザーを訪問して暮らしや家づくりを描いたもので前出の2例とも取材しています。

会沢:
松木さんが施工された住宅もそうでしたね。

松木:

そうですね。

高山の伝統的な格子や小庇のある家をQ1.0住宅にまで上げたのですが、大きな家が全室暖かくなって、高齢のご夫婦に本当に感謝されています。

寒くないし、朝起きも楽、洗濯物も室内干しでよく乾くとか大変な喜びようです。

会沢:
寒いところでそんな成果ですから、横井さん、名古屋のような暖かいところで同じような家をつくったら、とんでもないことになるんじゃないですか。

横井:

そうですね。

一昨年名古屋市内で建てさせてもらったのですが、冬でもシャツ1枚でまったく寒くなく、すごく快適だと、そういう住宅を楽しんじゃっているお客さんがいます。

外に新聞を取りに行く時は気をつけていると笑っていました。

会沢:
ちょっと大げさですね。やりすぎですよ(笑)。

小縣:

いや、Q1.0住宅※にしたら暖かいので、旦那さんがTシャツに短パンみたいな暮らししているとか、そういう話はよくありますよ(笑)。

それから、室内で飼っている犬が元気になったとの話もありました。

当社もその家は床下からの全室暖房ですが、光熱費はそんなにかかっていないですよ。

 

纐纈

家の中はそれこそ暖かいじゃないですか。

それで、まだ小さい赤ちゃんのいるお客さんの家を建てた時に、夜泣きが以前より少なくなったような気がすると言っていました。

暖かいとやっぱり気持ちも良くなるし、親も子どもも、身も心も健康になったような気がすると言われたことがありました。

家の中が寒くないというのはいいですよね。

会沢:
そうですね、暖かいと育児にすごく助かるという話も聞きますね。その方は12月誕生の母子でした。

小縣:
僕たちのお施主さんからは寒いとは聞きませんが、一般的な新築住宅では、寒いとか結露するとかはよく聞きますね。

うちが採用している床下エアコンや、断熱・気密がとれた住まいを案内すると、こんなに違うんですねと実感してもらえますね。

会沢:
加藤木さんは静岡県の北から南まで各地でお仕事をされているようですが、住んだ方の反応は?

 

加藤木:

やはり、夏涼しくて、冬暖かいと喜ばれています。

特に、夏は自然風を意識して設計しているのですが、とても暮らしやすいと好評です。

 

 

 

会沢:
そういえば田原さん、『この「家」にしてよかった。』1号に載っている美濃加茂のIさんはすごい人でしたね。

冬は寒く夏は寒かった家を、リフォームしながら最終的に全室暖房全室冷房の家にしてしまったんですよね。

しかも、それ以後は24時間空調して、それでいて年間の光熱費が全体で10万円そこそこというのですから驚きです。

上手に暮らしているなぁという印象です。

田原:

あの工事をさせていただきましたが、あれが本物の高断熱住宅でしょうね。

あのお客さん、冬が近づいてホームセンターに並ぶ沢山の暖房器具をみて、「家を暖かくするのは暖房器具ではなく断熱なんだけどなぁ」とつぶやいた話があるんですよ。

断熱の性能を確信したって感じですね。

昨年建てたお客様から年賀状を頂きました。

「おかげさまで、とても気持ちのよい冬です。今朝は雪がちらつきましたが、エアコン1台でまかなえています」そんな内容ですが、自然な暖かさに感動してくれて、うれしいですね。

【快適な暮らしで光熱費が今までより少ない】

会沢:

今、光熱費の話が出ましたが、実際、暖房にかかる費用はどうなっていますか。

例えば、溝口さんの高山では、皆さんがつくる高断熱住宅ではなく、普通の家庭だと年間の暖房費はいくらぐらいになっていますか?

 

 

溝口:

規模や間取りなどにもよると思いますが、一般的には暖房費が年間10万円ぐらいで灯油やガスなど光熱費全部だと25〜30万円、或いはそれ以上にかかっていると思います。

それが、先ほどの家で冬の間全室暖房して年間の電気代が全部で17万円でした。奥さんニコニコしていますよ。

会沢:
今度はいきなり暖かい地方になりますが、桂山さん、四日市では、どうですか?

桂山:

そうですね、建築前に、今の生活の電気代を聞いてみるんですが、大抵の方は、「いくらだったかなぁ」くらいの印象です。

四日市は溝口さんのところや東北の方と違って、命の危険を感じるほどの寒さはないので、正直我慢できちゃうんだと思うんです。

皆さん「エアコンなんてもったいない」という感じ。

こたつで縮こまってたら何とかなる、という感じですね。

一昨年完成した高断熱住宅はオール電化ですが、冷暖房しない月で8000円〜9000円、冷暖房の年間費用が3万円〜4万円、合計で14〜15万円ぐらいです。

細かく計算すると冷暖房は一日あたりで200円くらいと思っています。

缶ジュース2本程度の金額で、24時間、家中どこでも快適に暮らせるのですから、空調しない手はないと思います。

会沢:
静岡ではいかがですか。

加藤木:

この辺と比較すれば気候も穏やかだと思いますが、一番少ない人で月5000円台、平均は7000円台でしょうか。

静岡ですと、ほとんどエアコン1台で全館冷暖房できます。

試しに1か月かけっぱなしにしたという方の話を聞いても光熱費は全部で1万2000円程度ですね。

エアコンの設定は、冬場は18〜20℃、夏場は28℃設定といった感じです。

会沢:
私が各地で聞いている光熱費(水道を除く給湯・調理・照明・家電)は高断熱ではない家の一般的な家庭で年間23万円ぐらいです。

3〜4人で一般的な暮らしをしている家族で25万円ぐらいと思っています。読者の皆さん、一度確認してみてください。

【建築の費用】

会沢:

高断熱住宅は今までの家より快適で、しかも光熱費が減っているという話が出ました。

ではそんな家をつくるのにどれだけの建築費になるのか、価格の話に入ります。

 

 

 

堀:

お客さんから住宅の価格を坪いくらですかとよく聞かれるのですが、住宅は色々なものが一軒一軒違うことが多いので一概に坪単価でいくらと言えないんですよね。

 

 

 

会沢:
それはわかりますが、お客さんにしてみれば価格をどう聞いていいかわからいというのも事実だと思うのです。

皆さんはこれまで何棟もの家を建ててきているのですから、結果として大体この位の性能ならこのぐらいという、ざっくりした価格でもいいですから話していただけませんか。

小縣:

そうですね、坪単価は、判断基準としてはよく分かるんですが、仕様がどう変わっていくか分からないので、つくる側としては答えられないというのが正直なところですね。
ただ、結果的には70万円前後でしょうか。

 

 

 

梅本:

うちも、坪単価は聞かれたら80万円〜とお伝えしています。

そこに含まれていないのはカーテンとか。

あとは地盤調査をして改良が必要なら改良、造成が必要なら造成と個別に対応します。

皆さんがおっしゃられるように平屋と二階建てでは違いますし。

選ばれる設備によっても大分値段は変わってきますね。

丸山:

うちは70万円ぐらいが一つの境目で、70万円であれば、熱交換器も付けて、これぐらいの性能ですと言えるんですね。

ですが、価格を抑え過ぎると性能もぐっと下がってしまうんです。

建てるからには性能はちゃんとしてやりたいので、僕もあまり坪単価で話しません。

家の規模にもよりますが、70万円ぐらいがちょうど境目かと思います。

溝口:

うちは、だいたいUA値0.3くらいの家なんですが、平均を出すと70万円弱です。

坪65万円という話を最初にして、その後色々詰めていくイメージです。

もちろん、平屋や二階建て、家の規模によっても違うので、それを目安に65万円という話をします。

 

 

纐纈:

自社のHPには高断熱・高気密という言葉は載せずに、坪50〜80万円と載せています。

いわゆる高断熱仕様の暖かい住宅が前提だと、去年建てた住まいで、坪75万円ぐらいでしたね。

 

 

 

遠山:

私のところも皆さんとほぼ同等ですね。

平屋と二階建てでは単価は違うと思いますが、70〜80万円ぐらいというところで、あとはお客さんと相談ですね。

 

 

 

 

加藤木:

平均55万円ぐらいですね。

 

 

 

 

 

 

鈴村:

うちも積極的には坪単価の話はしませんが、Q1.0住宅の見学会のご来場者向けに、普通の次世代省エネ基準レベルと、それより若干上のレベル、そしてQ1.0住宅のレベル2の、3つの金額と年間の光熱費などを比較してもらいますね。

 

 

 

 

桂山:

結果としては、80〜85万円。

サッシは、リビングは木製、他の面や水廻り関係は樹脂ですね。

断熱は正直こちらで決めています。

数値で言うとUA値0.4を切るぐらい、Q値は1.2前後くらいですね。

 

 

田原:

うちの場合は、付加断熱が標準なので、なくせばそのぶん安くなりますという話ですね。

ただ、うちに来る方はある程度は性能に期待してきているので、最初に80万円という話をして、打ち合わせしていくということになります。

最終的にお客さんが付加断熱はやめようというなら、その分安くなりますよという話ですね。
でも、付加断熱をしない方はいないですね。

藤井:

皆さんと一緒で、あまり坪単価では話さないんですが、お客さんの希望を聞いて、結果的には70〜85万円ぐらいかなと。

 

 

 

 

 

横井:

うちも結果的には75〜85万円ぐらいです。

 

【開口部 サッシ・ガラス】

会沢:

今度はサッシやガラスの標準仕様についてお聞きします。この2、3年の間、一番大きく変わっているのは窓だと思います。

アルミ樹脂の複合サッシを標準にしている方は手を挙げて下さい(※数社)

樹脂サッシを標準にしている方(※多数)

Low‐Eペアガラスを標準にしているところは(※ほとんど)

それでは、トリプルサッシを使ったことある人いますか(※大多数)

予想以上ですね。

そうすると、実際Low‐Eガラスは標準と言っても良いですね。

住宅性能はかなり高いと思いますよ

【業者選定は見学会を参考にするといい】

会沢:

高断熱住宅は、冬暖かく、夏涼しいのが大きな特長だと思うんですね。

だから、冬の暖かさが分かる見学会や、暖かい家をつくる構造見学会を行いますよね。

次にテーマにしたいのは、高断熱住宅をきちんとつくっている会社の見分け方です。

一つの目安として見学会があると思うんですが。

皆さん、冬の体験見学会や完成見学会をやっていますか?(参加者からやっていますという声多数)

では、開催の内容や、お客さんの反応を教えて下さい。

また、見学会に行くポイントのようなものがあったらアドバイスもお願いします。

武田:

うちは、冬の一番寒い時期にやりますね。この時期はQ1.0住宅の良さが一番体験できますし、高断熱住宅をPRしている他社との違いもよくわかります。

 

 

 

会沢:
桂山さんのところは見学会をしていますか?

桂山:

はい、しています。

お施主さんの住んでいる家を見せてもらうことが多いです。

見学者の皆さんは玄関に入って暖かいというのがすごく不思議なようです。

これまで家中が暖かい建物を体感したことがないので、それで不思議に思うのかも知れません。

うちは基本、床下にエアコンを入れているので、床が暖かい暮らしも喜んでもらえています。

見学会は、実際に住まわれている家が見られるので、モデルハウスを見るより参考になるんじゃないかなと思います。

溝口:

住宅展示場や工務店の見学会に行ったら、外に回ってエアコンの室外機が何台あるか見て欲しいですね。


同じエアコン暖房でも何台も使っていれば室外機が沢山あります。

室外機の数が多ければ多いほど断熱性能は低く、寒い家ということになります。

 

会沢:
その意味でも見学会は冬の寒い時に訪問すべきですね。小縣さんはどうですか?

小縣:

冬やっています。

やはり、玄関を開けた時に皆さんびっくりというか、感動してくれますね。

うちは、サーモカメラとレーザーポイントで表面温度を可視化していて、それも見てもらっています。

サーモカメラで温度を見るとサッシまわりが青く出るのでその理由なども説明して、高断熱住宅のメリットをお伝えしています。

武田:

来られたお客さんには、たとえ性能を売りにしている会社であっても、UA値※しか出せない会社はだめですよと言っています。

具体的な暖房燃費が出ないからです。

それと、ゼロエネ住宅と一口に言いますが、性能は太陽光発電の大きさも関係ありますよとも伝えます。

ちなみに40坪の住まいですと、3.6kWぐらいでゼロになるようにしています。

会沢:
完成見学会は皆さんやっている印象ですが、断熱・気密の施工状況をみられる構造見学会をしているところはありますか? 

参加者:
半数位挙手

会沢:
ユーザーの皆さんは、もし、構造見学会のチラシや案内を見たらぜひ行って欲しいですね。

構造見学会は断熱や気密施工の状況が見えてますから、なぜそうするのか聞いてみるといいですよね。

説明に自信がない会社は見学会そのものを開催できませんから、技術を習得しているかどうか、工務店の判断基準にはとてもいいですよね。

武田:
そうなんですが、構造見学会は、なかなかお客さんが来ないのが実際ですよ(笑)。

会沢:
最近は、予約制で開催しているとも聞きますが?

小縣:
私のところは、予約制でやっています。

1組1時間で。1日5組の2日間で10組ぐらいです。

全部予約制で開催していますね。

お客さんは質問しやすいですし、じっくり説明を聞いてもらえるのですごくいいと思っています。

会沢:
聞く方も説明する方もじっくりやりとりできるところがいいと最近は事前申込みで予約制のところが多くなっているようです。

見学会はやはり自信がないとできないと思うので、読者の皆さんには是非体感してもらいたいです

【夏は全室冷房】

会沢:

次に夏場の話をしたいと思います。

昨年の夏、広島、大阪、横浜、名古屋、四国と会員さんの物件を取材して来たんですが、皆さん全室冷房にしていました。

おそらく北の方で全室暖房の住まいが広まってきたように、南の方では全室冷房の住まいや考え方がより普及していくのかなと予感しています。

Q1.0住宅ぐらいのレベルの高性能な住まいなら、それが可能ですよね。

やはり皆さんも夏の「全室冷房」を意識しているんですか?そういう方は、手を挙げて下さい。(ほぼ全員挙手)もう、そうなっているんですね。

田原:

冒頭のIさんは、夏の間中エアコンがかかっています。

あの家を見ていて、Q1.0住宅レベルになると楽々全室冷房できるんだと自信を持ちました。

Iさんは、自然の成り行きで連続冷房の生活になりました。

冷房かけておいた方が色々な面でいいことがわかったのです。

 

横井:

私も、名古屋でそれを経験しています。

断熱をしっかりするとエアコンをビュービューかけないでも涼しくなっちゃうんですよね。

正直、つくる側が驚いています。

 

 

 

藤井:

一番いいなぁと思うのは湿度ですね。

エアコンが運転されると除湿するので、どの家でも大体50〜60%です。

27〜28℃でそのくらいだとすごく快適ですよね。

夏は全室冷房を基本にしています。

会沢:
高断熱だからできることですね。

他の皆さんで、何か夏対策で特にこれはやっていますというものはありますか。

加藤木:

そうですね。

これは設計の基本ですが、その土地の気候風土を読み解いて、いかに自然な風という冷房を取り入れるかも大事なポイントですね。

熱気を室内から通風で逃がして、それからエアコンを30分ぐらい入れて、快適に過ごすという感じですね。

溝口:

南面に大きく開口を取るのは皆さんも同じだと思うんですけど、日除けを上手くしないと、朝や夕方は日射が入ってきて、とても暑くなってしまうんですよね。

なので、標準的に外付けブラインドは付けるべきと思います。

内側はハニカムブラインドを入れればいいんですけれども、その辺もこれからは考えていきたいと思っています。

会沢:
『この「家」にしてよかった。』の話になりますが、3号には関西を中心に夏の暮らしが6話載っています。

是非参考にしていただきたいと思います

【危ない断熱材】

会沢:

最近、全国的にウレタンフォームの吹付がすごい勢いで流行っているんです。

最近のニュースで工事現場の火災による死亡事故が起こっています。

原料は同じウレタンなんですよね。

新住協ではずっと、ああいう燃えたら危険なものは使わない方が良いと考えているんですけど、皆さんはそれに対してどう思いますか?

田原:

やめましょうって話していますね。

 

 

 

 

 

 

藤井:

燃えるのと、劣化します、という事はいつも話しています。

会沢:
そういうのってお客さんに聞かれることあるんですか?

 

 

 

小縣:

口に出される方はいますね。
その時は、うちは使いませんと伝えます。

 

 

 

 

 

会沢:
地震と火災は日本のどこでもついてきますから、安全なものを使いたいですよね。

私はお客さんに対する業者の良心だと思っています

【リフォームと断熱】

会沢:

次はリフォームの話です。

暖かく暮らせるよう断熱リフォームとか断熱改修と呼ばれていますが、皆さんされていますか?

 

 

 

 

丸山:

やっています。一昨年やらせてもらったところは、リビングと台所部分で20畳弱の面積です。

父が建てた築30年の家で土壁の家でした。

一部屋だけどうしても暖かくしたいということで、細かい部分には手がかかりましたが何とかできあがりました。

そのつなぎで洗面所とお風呂場の改修もしました。

今は、エアコン1台で暖かく過ごせています。

ほかに、寝室だけやらせてもらったところもあります。

そこにTVを置いていて、たまに伺うと玄関でピンポンを鳴らしてもすぐに出て来ないんです。

一番奥の寝室だけ暖かくなっちゃって、そこだけに居たくなっちゃう(笑)。

できれば全部やりたいんですけど、そこまでは予算の関係もあってなかなかできていないです。

会沢:
人は正直だから、冬は暖かいところに集まっちゃうんですね。
リビングとお風呂で総額どのくらいですか?

丸山:
その時は、お風呂とキッチンも直させてもらったので、500万円ちょっと超えるくらいです。

会沢:
遠山さんはどうですか?最近やった現場の金額はどのくらいで、どのような内容ですか。

遠山:

私は大工なのでその辺は得意にしています。

断熱材施工やサッシとか、部分的な事もやるし、もちろんトータルでもやります。

この前やったのは床全部と断熱材を入れ直して、1000万円弱でした。

お風呂は変えませんでしたが、他の水回りは新しくしています。

サッシも断熱サッシに変えました。快適ということです。

会沢:
田原さんは?

田原:

ゾーン断熱というか、エリア断熱というか、要はLDKと水廻りだけの改修もありますね。

お子さんたちは独立して50代の夫婦二人だけの暮らしだから、断熱を家全体にするにはお金がかかり過ぎるし、LDKと水廻りと、リビング隣の和室を含めた、そういう部分の断熱改修です。

断熱気密の原理原則というか、理屈を知っていれば、部分的な断熱施工も難しくありません。

これから高齢になっていくわけですから、暖かく暮らせるというのはすごく大事だと思います。

原:

私のところでもあります。

子どもさんたちが独立し、夫婦二人になられて、最初は二階建ての家を平屋にしたいと言われたのですが、予算もあって現状のまま全体を断熱しました。

その方がコスト的に安かったのです。

今年で2回目の冬を迎えますが、快適だと喜んでいただいていますね。エアコン暖房です。

 

会沢:
群馬や栃木の話なんですけれど、最近、暖かい家ができるということが知られるようになって、1000万円くらいの予算で水廻りを含めた生活ゾーンのリフォームをやりたいという話がすごく増えているんです。

あと何年生きられるか分からないけれど、1000万円くらいでできるなら、暖かい家で暮らしたいという主旨です。

小縣:

一昨年やったところは、年配の方で、畳の部屋をフローリングにしてベッドを置きたいということでした。

そして、床暖房が一番暖かいと思うのでやりたいと希望されたのですが、別にしなくてもいいですよという話をして、床暖房はやめて提案通りにしてもらったのですが、この前伺ったら、やっぱり床暖房はやらなくてよかった、十分暖かいですよという話でした。

床暖房は設備にもお金がかかりますし、暖房費もかかるわけです。

だったら、断熱を増やした方が絶対得です。

田原:
リフォームをして暖かくなると思っている人は、まだ、少ないと思います。

関東のように、1000万円ぐらいで生活ゾーンをリフレッシュして、その上で、暖かく暮らせるようになるんだと認識されるレベルになればこの地方でも増えると思います。

これから、やってみたいですね。

会沢:
水廻りやリビング、内装を直したいというなら、リフォームの時に断熱もできるので、ワンセットで考えて下さいという話ですね。

また、効率よくリフォームできるので、実際に外壁を直すんだったら、断熱も一緒に考えてほしいですね。

東北ではワンセットで考えることを話しています。

溝口:

うちは耐震補強もしていて、外壁も直すので、そういった時に断熱材もどうですかって提案しています。

 

 

 

 

 

堀:

お客さんの中には断熱を入れれば暖かくなるっていう考えがすごく広がっていると感じています。

浴室を取り換えたり壁の張り替えなどのリフォームをするとき、ただ断熱材をいれても快適になるわけではないんですよという話をさせてもらっています。

最近、リフォームは多くなってきていますので、必ず暖かさをセットにするよう心がけています。

 

武田:

去年の1月頃、リフォームの相談を受けまして。

家が寒いんですと電話が来たんですね。

どちらでお建てですか?と尋ねたら、大手ハウスメーカーさんということでした。

新築したばかりの住まいなので、その時はそちらの設計の方に相談した方が良いですよとアドバイスしました。

 

【つくる側からユーザーさんに聞いて欲しい一言】

会沢:

最後に、それぞれの地域特性を踏まえながら、新築やリフォームをする方へのアドバイス、あるいは、こうしたらいいというような一言を読者にお願いします。

桂山:

地域的に断熱に関心が高い地域ではないのですが、だからこそ24時間通して家中が、冬だったら暖かい、夏だったら涼しい快適な環境が月数千円で作れるというのを1度実際に感じて欲しいと思っています。

感じたら、考え方がガラリと変わると思います。

加藤木:

家づくりを考えている人は、高断熱を大前提に、プランを設計する方とよくよく話し合って計画を立ててほしいですね。

私の場合、夏は風のよく吹く地域なので、その風をうまく取り込みながら、できるだけ動力に頼らず、自然の力を利用した住まいを設計しています。

会沢:
溝口さん、高山で家を建てる人へのメッセージを。

溝口:

飛騨地方は一番日射が欲しい冬に日射が少ないんです。

なので、日射を入れることと同等に、逃がさない事もすごく大事です。

そのため、大きい開口の時は、ハニカムブラインドなどを付けて暖かさを逃がさない工夫も必要だと思います。

松木:

私は岐阜県の飛騨地方ですが、普通の家でも暖かくなるだろうと思っている人が多いのが実情です。

でも、私たちが建てている高断熱住宅とは絶対差がでるというのは分かっていますので、ぜひ一度体感してほしいですね。

また、高断熱住宅はヒートショックをなくすという、室内温度のバリアフリーも併せて獲得でき、室内の動きもアクティブになるので、その辺を是非知って欲しいと思っています。

藤井:

なるべく躯体にお金をかけた方がいいですよって、お客さんにいつも言っています。

住宅は長く使いますから、つくるときにしっかりしておくのが結局は得です。

梅本:

恵那市などこのエリアは、冬寒く、夏暑くて、温度差も結構あります。

でもすごく日射には恵まれた地域なので、その自然の恩恵を取り入れつつ、高断熱で快適に暮らせる家づくりをして欲しいですね。

鈴村:

太陽光発電など、設備はあとで取り換えがきくので、まずは取り換えのきかない構造にこだわって、快適かつ長持ちする丈夫なお家をつくっていただきたいですね。

原:

特に冬の住まいを一度体感してみて下さいという事をお願いしています。

体感することが大事です。

田原:

住宅の基本性能は、断熱と気密と換気と冷暖房システムなので、その4つをちゃんと論理的に、納得できるように説明してくれる工務店や設計者との出会いが大切です。

住宅を建てようとする人も、住まいとは何かを勉強してもらえればいいと思っています。

纐纈:

デザインやコスト、機能など色々なバランスの指標はあると思うんですが、僕らの同世代の若い方にも、デザインの他に、しっかりとした機能があるっていうこともすごくかっこいい事なんだよということを伝えたいです。

しっかりと性能と機能が整った家に住むことは、充実したライフスタイルの基本だよっていう考えを持って、家づくりの工務店を選んでほしいです。

そういう家を選ぶというのは、心が豊かになるし、自分がやりたいこともやれる、長生きもできるし、健康になると思っています。

小縣:

構造自体の気密断熱をしっかりしている工務店の見学会に参加して、それをちゃんと説明してくれる工務店に出会う。

そして、それを自分でちゃんと納得できるところまで勉強して、ある程度のことを判断できるようになることも必要なんじゃないかなと思います。

そうでないと、ほかの普通レベルの住宅との違いも分からないし、その住宅会社がしっかりやっている工務店なのかどうかもわからないことになります。

構造見学会などには是非来てほしいと思っています。

丸山:

夏の暑い日に土壁の家の和室の畳の上に座ると、ひんやりするんですよね。

それは土壁のよさもあると思います。それが高断熱・高気密を体感すると、同じようにひんやりした感覚が得られるんです。

土壁と高断熱の両方できれば一番いいんですが、なかなかそこまではできません。

断熱が効いた住宅を体感してもらうのが一番いいと思います。

丸山(息子さん):

私たちの世代も結婚して家を建てるというのが増えてきていて、話を聞くと、性能にはほとんど関心がなく、今の最先端の住宅はエアコン1台で全部冷暖房できるんですよと話すと、驚くというか、本当に疑われますからね(笑)。

そう考えると、デザインや見た目も大事ですが、それよりはもっともっと性能に目を向けて欲しいなと思います。

田原:
やはり、少ないエネルギーで暖かいということは外せませんね。

ただ、東北のようにとても寒い地域に比べると、一冬の暖房費の差はあまり違いがないので、南の地域は、暖かさに、デザインなどのプラスアルファも大切なポイントになってきますね。

武田:
ある日、私どもの見学会に高断熱専門の設計をPRする会社さんに設計を依頼しているという方が来られて、床下エアコン1台で本当に暖かいんだと妙に感心していました。

話を聞いてみると、依頼している会社の見学会に行ったら、床下エアコンが稼働しているのに1階は18℃、2階は14℃(エアコンは稼働している)と思った以上に寒くて、非常にショックだったというのです。

この会社、Q値は1.7程度だということですが、床下エアコン1台で家中暖房する場合、Q値は1.2以下でないと上手くはいかないと私は思っています。

そういう住宅会社もありますから、お客さん自身も勉強が必要ですね。

会沢:
皆さん今日はありがとうございました。

冒頭、中部東海のユーザーから高断熱住宅に関する問い合わせが多いと話しましたが、それは裏返せば、皆さんからの情報が少ないということにもなります。

住まいがしっかり断熱されると夏も冬も本当に快適に暮らせる家になるということは実証されています。

皆さん方はすでにそういう住宅をつくっているのですから、もっともっと多くのユーザーに知ってもらう努力も必要です。

ユーザーの皆さんには私たちの家づくりを是非検索して知って欲しいと思います。

ホームページや参考書籍も是読んで頂きたいと思います。

必ず参考になると思います。

のど元過ぎれば熱さ忘れるという諺があります。

冬の寒さ、夏の暑さを忘れずに、断熱を重視した家づくりをお勧めして、座談会を閉じます。

追伸 事務局への問い合わせは4月なるとパッタリ止まります。のど元を過ぎるからでしょうか。