新住協 中部東海支部

ユーザー登場
<私は家を建てました 三重県菰野町/T邸>

私は家を建てました 三重県菰野町/T邸

性能もデザインも大満足と喜ぶT夫妻

■人は家を建てる時何を重視するか

人は家を建てる時何を重視するか、言い方を変えればどんな家を建てたいかということになるが、ここに興味深い資料がある。

上表はある設計事務所がこれから家を建てる人と最初に打ち合わせするとき、どんな家を望んでいるか、それを明確にするため記述してもらう表である。

最初に内容と理由を記入して、最後に優先順位をランク付けするというもので、いつも上位に来る項目は大体決まっていて「構造」と「温熱環境」だそうである。

構造とは地震に強い家、温熱環境は快適に暮らせる家と言い換えられる。

そして3位以下はそれぞれの嗜好からばらつきが多いそうだ(読者の皆さんも記入してみたらいいと思う)。

大きな空間でも小さな暖房で冬も快適

■菰野町に建った家

平成29年三重県菰野町に建てられたT邸は、まさしくその通りの家である。

Tさんはまだ30代である。

いつ来るかもしれない大地震に生涯のうちに必ず遭遇することを覚悟しなければならない年齢だ。

それに対して備えたい。

また、日本列島の近年の夏はいわゆる半端ない暑さだ。

菰野町の冬は東北・北海道のように寒くはならないが、暖かいとはいえ暖房なしで暮らすことはできない。

そんな中でも快適に暮らしたい。

一方、エネルギー価格が下がるとは思えない社会情勢だ。

省エネな暮らしができる家にしたい。

そんな思いから耐震構造と温熱環境を重視したが、 Tさんは素材とデザインにもこだわった家にしたいと考えた。

■構造も温熱環境もハイレベル

建築の設計監理を四日市の棲栖舎桂(代表・桂山 翔)に依頼した。

様々な打ち合わせがあって平成29年7月に完成した。

耐震性能も、温熱環境を左右する断熱性能も、考えられる範囲の現行基準最高のハイレベルである。

断熱性能は上限と思えるほどの性能に仕上がっている。

地震に対する性能は耐震等級1〜3の単位で表されるが、T邸は最高ランクの等級3である。

■T邸は札幌で全室暖房しても灯油500ℓの家

断熱性能について。

これは推測だが三重県全域でいってもT邸以上の断熱性能を保有する家はないと思う。

熱損失係数0.92である。

新住協のQPEX計算値では年間暖房エネルギーが716kWh(灯油換算82ℓ)、エアコンの暖房効率を考慮すると250kWh程度である。

金額でいえば7000〜8000円で収まる計算になる(暮らし方にもよる)。

もっとわかりやすく言えば、T邸をそっくりそのまま例えば寒冷地の雪国に移動したとしよう。

仮に札幌市に建って冬季間を24時間連続暖房(設定室温20℃夜間下げ)したとする。 その時の消費量が推定500ℓと計算される住宅なのである。

これは、同規模よりやや小さめな住宅でも一般的な高断熱住宅(省エネ基準等級4)が年間1000ℓと言われることから考えると、実に半分以下で暖かく暮らせる家である。

■そんな家が四日市に建つと夏冬どんな暮らしになるか

Tさんは夏と冬をそれぞれ過ごした。

建設地は三重県の中でも時々雪が降るくらいの寒い地域とのことだが「本当に暖かくて、外に出た時の寒さに驚くことがある」という。

何といってもいつでもどこでも、家の中が暖かいのがいいという。

暖房は床下からのエアコン暖房で、その出力能力は2.8kWhというからメーカーでは8畳用と表示されている小規模なものだ。

夏はというと、これも同じ容量のエアコンを吹き抜けのある上部に壁掛けされたエアコンで全室を涼しくする。

冷暖房ともシーズンになれば連続運転している。

弱い運転で冷暖房できれば、快適であり燃費も小さい。

省エネで快適とはこのことを言う

experience_built005

■省エネ基準レベルではなくQ1.0住宅レベルを建てよう

私たちは省エネ基準住宅の倍以上の高性能住宅をQ1.0(キューワン)住宅と呼んでいる。

そしてその削減率からレベルのランク付けをするのだがT邸は最高ランクレベル4 クラスの家である。

その時期になれば暑い寒いは毎日のことである。

せめて家に帰った時は暑い寒いの外圧から解放された安らぎを得たいものである。

その意味で、温暖地の住まいは省エネ基準程度に甘んずることなく性能を高めるのがいい。

何年か経ってからそうしたいと思っても、費用は新築時の数倍もかかる。

建築時にすることをお勧めしたい

■誰に依頼するか

ところが温暖地にそういう住宅を建築・設計してくれる業者は稀と言わざるを得ないのが現状だ。

だからユーザーはネットで検索する。

Tさんは知り合いを通じて桂山さんを知った。

桂山さんは、性能だけではなく、デザインにもこだわった家づくりをする地域の新進建築家と言っていい。

そういう人と巡り会えたのも幸運だが、三重県のような温暖地で桂山さんの提案に乗ったTさんの感性もいいと思う。

断熱も耐震もデザインも、三拍子満足できる家はそう簡単にはない。

若いTさんは住宅の次に何に向かうのか、尋ねてみたい気がする家づくりだ