私は家を直しました 岐阜県恵那市/伊藤邸
施 工
金子建築工業㈱
楽園住宅
目 次
築50年の家を全面改修
耐震性能も断熱性能も新築同等
耐震性能も断熱性能も備わって新しくなった伊藤邸
■新築同等とは
リフォームというと、新築同様とか新築並みとか、なかにはそっくりという表現をよく聞くが、あれは性能的にどの程度まで言っているものなのか、厳密にいえば新築みたいと言わなければならないのではないか。
住宅の新築には建築基準法があって、その法律に準ずる性能が求められるからだ。
リフォームでは特に耐震性能が重要になってくる。
大地震が続いて耐震性能の基準があげられているから、住宅は年数が経つと基準からどんどん離れてしまう。
リフォームでは新築とは別の耐震改修の診断法があって、その基準を超えることが要求される。
いずれにしても、屋根や壁、台所やお風呂、床や畳が新築時と同様に新しくなっただけでは新築同等とは言えないのである。
■伊藤邸のリフォーム工事
その点、岐阜県恵那市の伊藤邸のリフォームは様々な法的基準をクリアしている工事だった。
しかもその住宅は、築50年というかなりの年月が経っていた。
施工は恵那市の楽園住宅で工期は約6カ月、2018年3月に完成した。
「そんなに年月の経った住宅をさらに改修したのですか」という声が聞こえそうだが、そこにはそれなりの理由があって、改修後、伊藤さんは「やっぱりリフォームでよかった」と大満足だったのである。
この住宅は恵那市の建築物耐震化促進事業費補助金を受けている(140万円)。
当然、耐震改修の基準があって、それをクリアしなければ補助は受けられない(少々専門的になるが、耐震診断法の中の一般診断法という方法で、大規模地震でも倒れないという評点を得ている)。
工事の一部を紹介すると、例えば基礎は下写真のように既存の基礎に新規の基礎を敷設して(抱かせ基礎)強度を高めている。
同様に構造も耐震計算されて、総合的な評価を受けているのである。
さらに、断熱性能は省エネ基準を大幅に上回っている(下表参照)。
いずれも、きちっとした計算書が添付されていて、新築同等という表現はこういう住宅にこそ適用されるのである。
施工した楽園住宅は「この工事でさらに50年は安心して、快適に暮らせる」と話す。
抱かせ基礎 新しい基礎が旧基礎の外周に補強された
■なぜ改修を
当然、新築に建て替えも検討されたのだが、大規模改修にした理由は2つある。
1つは、まったく別なところに半年も仮住まいすることに抵抗があったこと。
2つ目は、予算的な問題。
この工事にも相応の費用は掛かったが、新築するとなるとさらに700〜800万円上回る計算だった。
伊藤さんは現役時代、土木関係の仕事に就いていた。
そのため、専門的な知識もあって、楽園住宅の改修技術の説明は信頼性が高いものと理解できた。
それも全面改修決断の理由だった。
■改修工事の流れを検分
伊藤さん一家は敷地の一角にあった建物を仮住まいとした。
当然、工事の進捗を日々見ることになる。
伊藤さんが自身の時代と一番大きく変わったのは断熱だと、工事の担当者に話していたことがある。
台所や風呂の進歩はこれまでも見て知っていることだが、断熱はこうして間近に見ることはない。
床や壁に施工される断熱材もさることながら、防湿シートやその施工方法は初めて見る工事だった。
さらに、壁の外も断熱材でおおわれる方法には新しい時代を感じるとも話した。
伊藤さんの時代にはなかった断熱性能(Q値やU値)も説明を受けて納得した。
床壁の高断熱高気密化工事
■暮らしやすさの改善
2018年3月完成、入居した。
恵那の3月は朝夕まだ寒く暖房が欲しいくらいだったが、新しい家は暖かかった。
工事をずっと見続けてきた伊藤さんは足元に床の暖かさを感じる度、その下に断熱材がしっかり、しかもたっぷり敷かれていた工事風景を思い浮かべるのだった。
そして夏、新しい家ではエアコンをずっと運転する生活にしてみた。
かけなくとも暮らせるには暮らせるのだが、弱く運転していた方が低い湿度になるのでさらりとした肌触りが気持ちいいことがわかって、それからはずっと連続運転の生活をすることになった。
それでも電気代が目立って増えるようなことはなかった。
■家の中から庭が全開で見える
新しい家で何よりもうれしかったのは、丹精込めて手入れをしてきた庭が窓いっぱいに広がる景色として見えることだった。
春になって新芽が吹いて、若葉となり、花が咲き、夏になって緑は青く深まって、それは季節の中に粛々と生き続けているように思えた。
玄関に続く門も庭木も家の全容も、ただ新しくなっただけで趣は昔のままだった。
家族とともに苦楽を共にした人生が刻まれた家である。
伊藤さんは「仮住まいは大変だったけど、リフォームでよかった」と、しみじみ思った。
施工後
庭が一望できる明るい部屋
施工前
施工後
以前の風情そのままの玄関に続く格子戸
施工前
高断熱住宅について
- 大きく進歩している、高断熱住宅
- これまでの家の欠陥と高断熱住宅の改良
- 屋根断熱をしよう
- ガラスの話
- なぜこんなに、暖房費に差がつく
- 住宅の暖冷房燃費計算プログラム QPEX(キューペックス)
- 省エネ住宅のつくり方
- これからの住まいはQ1.0住宅で全室冷房
- 写真で見る断熱リフォーム工事
- 住宅見学会に行こう!!
- 高断熱住宅の失敗<夏編><冬編>
- ユーザー登場<私は家を建てました 三重県菰野町/T邸>
- ユーザー登場<私は家を建てました 岐阜県恵那市/Mさん>
- ユーザー登場<私は家を直しました 岐阜県恵那市/伊藤邸>
- ユーザー登場<私たち家を建てます 愛知県T市/川端さん>
- 新築・リフォームする人のために本音で語る座談会
- 住宅にも格差が生じ始めたか
- ユーザーの皆さんに伝えたいこと